耳鼻咽喉科
概要
耳鼻咽喉科は、聴覚(きこえ)、平衡覚(バランス)、味覚、嗅覚などの多くの感覚器と、発声器官や顔面神経などの運動器を扱っています。このような感覚、発声、顔面神経による喜怒哀楽の表現は、生命の維持に必須ではありませんが、人間にとって必要不可欠な機能と言えます。同時に耳鼻咽喉科は気道である鼻、口腔、咽頭喉頭(のど)、気管と一部食道の疾患を扱っており、呼吸、嚥下という生命維持に不可欠な機能の障害を治療する科でもあります。
詳細
耳の病気
●急性中耳炎
小児に多く、耳痛や発熱を主訴に受診することが多い疾患です。抗生剤を用いた保存的治療から鼓膜切開や鼓膜チューブ挿入術などの手術治療を行っています。
●滲出性中耳炎
急性中耳炎の治療後などに中耳に浸出液が貯留する疾患です。耳が詰まった患児や軽度の難聴を訴えます。難治性の場合は鼓膜切開や鼓膜チューブ挿入術などを行います。
●突発性難聴
ある日突然耳が聞こえにくくなる疾患です。残念ながら原因は不明です。ステロイドを用いた治療を行います。
加齢性難聴
65から74歳では3人に1人、75歳以上で約半数が難聴で悩んでいると言われています。加齢に伴う難聴を加齢性難聴と言います。難聴は認知症の最も大きな危険因子であると指摘されており、難聴と認知症の関連が注目されています。この加齢性難聴に対処することで認知症が予防できる可能性があります。つまり、補聴器をつけて適切な聞こえを維持して脳を活性化して、家族や友人とのコミュニケーションを楽しんでいれば、認知症を予防したり、発症を遅らせる可能性が高いと考えられています。難聴でお困りの方はご相談ください。
めまい
●良性発作性頭位めまい症
めまいを起こす代表的な疾患です。寝起きや寝返り、上を向いた時など頭を動かした時に数秒から数分、回転性めまいが起こります。当科では赤外線CCDカメラを用いて診断して、可能な場合は浮遊耳石置換法を行います。
●メニエール病
症状は反復する回転性めまい、難聴、耳鳴で、めまいの持続時間は1時間以上が半数以上です。メニエール病はめまい発作を繰り返すことにより次第に難聴が進行することがあります。治療の目的はめまい発作を制御して難聴の進行を防ぐことになり、利尿作用のある薬を用います。急速に難聴が進行する場合はステロイドを用いた治療を行うこともあります。
鼻の病気
●アレルギー性鼻炎
くしゃみ、鼻水、鼻づまり、眼のかゆみなどが主訴になります。日本ではスギ花粉症とダニによる通年性アレルギー性鼻炎が多いです。血液検査を行い、原因となる抗原を調べます。小児では血液検査を嫌がることも多く、当科ではイムノキャップラピッドという簡易的でより痛みの少ない検査も用意しています。小児の患者さんでも遠慮なく相談してください。
治療は、アレルギーを抑える薬物を用いて行います。また、当科ではスギ花粉症とダニによる通年性アレルギー性鼻炎に対して積極的に舌下免疫療法を行っていますので、希望される方はご相談ください。さらに、重症例に対しては後鼻神経切断術を行い、くしゃみや鼻水を改善させます。高度な鼻づまりに対しては鼻中隔矯正術や粘膜下下鼻甲介骨切除術などを行います。
●ゾレア
スギ花粉症でくしゃみや鼻かみの回数が1日に11回以上になったり、鼻づまりが非常に強く口呼吸になることを重症花粉症と言います。重症花粉症の患者さんでは既存の治療を行っても、約2割が症状の改善が得られないことが報告されています。このような患者さんに対して2020年から抗体薬が保険適応となりました。12歳以上が適応になります。高額な治療となりますが、効果は非常に良好です。すべての患者さんに使えるわけではありませんが、重症花粉症で悩んでいる方はご相談ください。
●慢性副鼻腔炎(蓄のう症)
長引く黄色い鼻水や鼻づまり、嗅覚障害などを認める疾患です。治療としては抗生剤や去痰剤などによる保存的治療を3か月程度行います。改善しない場合は内視鏡を用いた鼻内手術を行います。最近では好酸球性副鼻腔炎という鼻づまりや嗅覚障害が強く、手術をしても治りにくい副鼻腔炎の患者さんが増えてきました。手術をしても改善しない場合に、最近保険適応となった新しい抗体薬があり、当科でも使用していますので、お気軽にご相談ください。
のどの病気
●急性扁桃炎、扁桃周囲膿瘍
咽頭痛や嚥下時の痛みが主訴になる疾患で、重症例では食事ができなくなります。治療は抗生剤の点滴を行います。また、扁桃周囲膿瘍の場合は切開して排膿を行います。急性炎症を繰り返す場合は慢性扁桃炎として手術治療を勧めさせていただきます。
●睡眠時無呼吸症候群
いびき・無呼吸を主訴とする疾患で日中の眠気や倦怠感、夜間の中途覚醒を起こします。簡易睡眠検査(機器を自宅に持ち帰って検査していただきます)や終夜睡眠ポリグラフィー検査(1泊入院して詳しく検査を行います)を行って診断します。小児の場合は扁桃肥大やアデノイド増殖が原因となることが多く、アデノイド切除術や扁桃摘出術を行っています。成人の場合は鼻から咽頭・喉頭までの上気道が狭いことが原因となることが多く、CPAP治療を行うことが多いです。
その他
●顔面神経麻痺
原因が不明であるベル麻痺と帯状疱疹が関与しているハント症候群があります。突然顔が動かなくなり、目が閉じられなくなったり、口から食べ物や水分がこぼれるようになります。抗ウイルス薬やステロイドを用いた治療を行います。また、マッサージやリハビリなども行っています。
耳下腺腫瘍や顎下腺腫瘍、顎下腺唾石症などの唾液腺疾患や嚥下障害、頸部の腫瘍なども当科で担当しています。
当科で行っていることについて簡単に書かせていただきましたが、症状や治療法についてお気にかかることがあるようでしたら、いつでもご相談ください。丁寧にご説明させていただきます。
診療実績
中耳炎、副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、突発性難聴、顔面神経麻痺などを中心に、めまい、鼻出血、急性扁桃炎、扁桃周囲膿瘍、急性喉頭蓋炎などの急を要する疾患にも対応しています。
手術
口蓋扁桃摘出術 アデノイド切除術 鼻内内視鏡鼻副鼻腔手術 鼻中隔矯正術 下鼻甲介手術などを中心に行っています。また声帯ポリープや慢性中耳炎、耳下腺腫瘍、顎下腺唾石症などの手術も行っています。
担当医師紹介(常勤医師)
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医長/藤井 達也
- ■認定資格
- ・日本耳鼻咽喉科学会認定耳鼻咽喉科専門医
- ・日本耳鼻咽喉科学会認定専門研修指導医
- ・日本アレルギー学会認定アレルギー専門医(耳鼻咽喉科)
- ・日本耳鼻咽喉科学会委嘱 補聴器相談医
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医員/大西 皓貴
- ■認定資格
- ・日本耳鼻咽喉科学会認定耳鼻咽喉科専門医
- ・日本耳鼻咽喉科学会認定専門研修指導医